第一回「ナノスケール分子デバイス」セミナー
~ナノ分子マイスターへの道
日時:2012年3月29日 13:00-17:40
会場:化学会館ホール 東京都千代田区神田駿河台1-5
参加費:無料(懇親会費は別途お支払いください)
参加申し込み方法:当日会場にて受付
プログラム(2011/12/22掲載) (2012/1/31 要旨追加)
13:00-13:10 趣旨説明
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=_7POohfG4to[/youtube]
13:10-13:40 横田一道(東工大PD)「単分子接合における金属―分子界面制御と伝導特性」
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=kLKv5Lrw9fI[/youtube]
一分子が金属電極間に架橋された“金属―分子―金属”構造を有する単分子接合は、一分子電気伝導計測のモデルシステムであるとともに、単分子デバイスへの応用が期待される魅力的な研究対象である。単分子接合においては、金属―分子の接合界面が電気伝導に大きく影響するため、接合界面電子状態の理解と制御がその伝導特性の制御に必須となる。そこで、これまで広く用いられてきた金属―分子接合である金―硫黄結合に加え、種々の貴金属―カルコゲン接合を分光測定、伝導測定などによって系統的に評価した。その結果、接合によって非極在化したHOMOが伝導経路であり、その制御が接合元素置換によって可能であることが明らかになった。
13:40-14:10 笹岡健二(東大、PD)「ナノ構造体の電子輸送ダイナミクスシミュレーション」*
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=eYE1YNdu2zg[/youtube]
バイアス電圧印加直後に分子架橋系のようなナノ構造体に流れる電流は、従来の電気回路から予測できない。そこで本研究は、分子架橋系における過渡電流への分子構造及びバイアス電圧の印加速度の影響を、非平衡グリーン関数法を用いて調べた。分子と電極の結合が弱い場合、分子架橋を流れる過渡電流を、少数の分子軌道を流れる電流の和に分解できることがわかった。この軌道ごとの過渡電流は定常電流値付近を振動しながら定常状態に緩和し、過渡状態にある電子が電極とその軌道の間を往復運動することを意味する。この振動周波数は準位エネルギーとバイアス電圧の差によって決まり、電圧の時間依存性に対応して時間変化することが判明した。
14:10-14:30 野口元輝(阪大M2)「強磁性電極を用いた単分子接合の電気伝導度測定」
単分子接合におけるスピン輸送は、分子エレクトロニクスの可能性を広げる重要な研究課題である。単分子接合の磁気抵抗効果(MR)は、強磁性金属の状態密度と分子軌道のカップリングによって決まるため、通常のトンネル接合とは異なる特性が期待される。本研究では、Ni薄膜電極を利用したMechanically controllable break junction法により、室温・Ar雰囲気において、Ni/ベンゼンジチオール/Ni単分子接合のMR特性を調べた。Ni/BDT/Ni接合は数10%の巨大磁気抵抗効果を示し、分子なしのNiトンネル接合におけるMR特性との比較から、得られた巨大磁気抵抗効果が分子カップリングの効果であることを明らかにした。
14:30-14:50 中住友香(東工大D1)「Pt ナノ電極間を架橋したエチレン・アセチレン単分子接合の電気伝導特性」*
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=R6p-js7KP9s[/youtube]
本研究では高い伝導度を持つ単分子ワイヤの形成を目的として、長鎖不飽和炭化水素ワイヤの最小単位であるエチレン・アセチレン単分子接合の伝導度・非弾性トンネルスペクトル(IETS)計測を行った。単分子接合は超高真空・極低温において、Ptナノ電極に分子を吸着させることで作製した。単分子接合の伝導度計測を行ったところ、エチレン・アセチレン単分子接合は1Go(=2e^2/h)と金属単原子接合と同程度の高い伝導度を示した。接合の構造決定のためにIETS計測を行ったところ、単分子接合はともにPt電極とσ結合を形成していることが示された。また、スペクトル形状を先行研究の理論計算と比較したところ、エチレン単分子接合は単一の伝導チャンネルを持つことが示唆された。
14:50-15:10 Lee Seekei (阪大D2) “Charge transport mechanisms in molecular wires”*
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=U4c7qKvf0jg[/youtube]
The understanding of charge transport mechanism of single molecules bonded between metal electrodes is important in order to build single molecular devices. The charge transport mechanisms can be distinguished by two mechanisms, tunneling and hopping transport mechanism. The transition of the mechanism can be determine by scaling law and temperature dependence. Our group has previously shown the scaling of conductance behaviour of oligothiophene molecular wires with lengths ranging from 2~9 nm. In the present study, we have measured the conductance with at various temperatures by using the home-built scanning tunneling microscope (STM). Our result shows that conductance value of 5T-di-SCN and 14T-di-SCN (< 350 K) does not show temperature dependence, indicating tunneling transport mechanism while conductance of 17T-di-SCN shows an exponential dependence on the temperature, indicating hopping transport mechanism.
15:10-15:30 休憩
15:30-16:10 特別講演 川合眞紀(理研・東大新領域)「個々の分子の伝導特性;スペクトロスコピーからの学習」*
Part I 前半、イントロダクションから分子接合の電子状態、伝導特性に関する話題部分です。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=pDwLUnMGxjM[/youtube]
Part II 後半、IETS、Kondo効果に関する話題部分です。
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=kdywBJRP6W4[/youtube]
16:10-16:30 金子哲 (東工大M2)「窒素を含んだ単一分子の電子輸送特性の解明」*
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=ZJTbOUCSQFA[/youtube]
規定された高い電気伝導度を示す単分子接合の作製は単分子素子の応用化に向けて重要な課題である。本研究は分子骨格に窒素が組み込まれたN2、ピラジン分子に着目し、π軌道と電極の直接接続による電気伝導性の向上と配位結合による接合部位の規定を目指した。実験はPt電極を用いて極低温超高真空下でMCBJを用いて行った。作製された単分子接合の電気伝導度をin-situで測定し、更に非弾性トンネル分光による接合構造の特定を試みた。実験の結果、Pt- N2系は1 Go (2e2/h)を、Pt-ピラジン系は1 Goと0.3 Goの二つの構造を持つ事が明らかとなった。Nを分子骨格内部に組み込む事により、規定された高い電気伝導度を持つ単分子接合の作製に成功した。
16:30-16:50 今井みやび (東大M1)「銀基板上に形成したTCNQ誘導体単分子薄膜の構造及び電子状態」
有機デバイスの高効率化には、金属‐有機分子膜界面における分子膜の構造やエネルギー準位の制御が重要である。本研究では、Bis[l,2,5] Thiadiazolo-tetracyanoquinodimethane (BTDA-TCNQ)という分子に着目し、Ag(111)上における単分子膜の構造、及び電子状態を走査トンネル顕微鏡(STM)にて観測した。STM観察より、BTDA-TCNQはAg(111)上に√13×√13‐R14°超構造を形成することが分かった。この構造は、分子間力により形成される3次元結晶構造と等しいため、超構造形成にも分子間力の強い作用が考えられる。一方、吸着サイトはAg原子のオントップであることから、金属‐分子間力も強いことが分かった。また、dI/dVマッピングにより分子間に繋がる電子状態が観測され、分子膜内に伝導チャネルの存在が期待される結果となった。
16:50-17:10 正井 宏 (京大M1)「含ポルフィリン分子ワイヤの合成と電荷移動特性」*
[youtube]http://www.youtube.com/watch?v=P_luVIP4r_I[/youtube]
我々は合成化学的手法による分子エレクトロニクスの実現を目指して、高い電荷移動度を有する被覆型分子ワイヤの合成と、ナノ空間内でのカップリング反応によるビルドアップ型分子配線法の開発研究を行っている。現在、分子ワイヤ中にπ共役機能性分子を導入することにより得られる機能性分子ワイヤという新しい分子エレクトロニクス材料に着目し、それらの合成を検討している。本研究では、機能性分子としてポルフィリンを選択し、共有結合あるいは配位結合という2種類の結合様式で被覆型分子ワイヤ中に導入することに成功した。本発表では、2つの含ポルフィリン被覆型分子ワイヤの合成法とその構造および電荷移動特性を中心に報告する。
17:10-17:30 竹本整司 (筑波大D2)「エピタキシャルグラフェンの電子状態」
六角対称性をもつ物質であるグラフェンはフェルミエネルギー付近の線形分散に由来した特徴的な電子状態を持つ。しかしながら、基板と接合したグラフェンの電子状態は摂動を受け、基板との混成が大きい場合はフェルミエネルギー付近に小さなギャップができたりする。数層グラフェンにおいて、隣接層との格子ミスマッチの仕方によって層間の混成の大きさが異なることが報告されており、同様の効果が金属基板上のグラフェンにおいても予想される。そこで、本研究ではグラフェンと金属基板との界面構造に依存した電子状態を調べるために、強束縛近似法により基板との格子ミスマッチを含んだグラフェンの電子状態計算を行った。
17:30-17:40 まとめ
18:00-懇親会